最近、家づくりで「ファミリークローゼット」、通称「ファミクロ」をご希望される方が非常に増えています。ファミクロがあれば家全体が綺麗に片付く、そうお考えの方も多いのではないでしょうか?
確かに、ファミクロは非常に便利なものですが、ただ漠然と作るだけでは、期待した効果が得られないこともあります。限られた空間の中で、ご家族それぞれのライフスタイルに合ったファミクロの形を追求することが重要です。
今回は、福岡で実際に注文住宅の設計を手がけるウィズダム建築設計の女性一級建築士・菊田が、ご自身の経験(30代、4歳と1歳のお子様を持つ4人家族)をもとに提唱する、「失敗しないファミクロの作り方」についてアイデアをご紹介します。
この方法を知れば、「ご家庭に必要なファミクロのサイズ」が明確になり、注文住宅の計画がより楽しくなること間違いなしです!
- 目次
- 1. そもそもファミクロとは?
2. ファミクロの魅力
1)家事動線と生活効率の向上
2)家族の洋服の一括管理
3)各部屋の収納スペースを削減
4)家族間のコミュニケーションの場に
3. ファミクロのデメリット
1)プライバシーの問題
2)時間帯による混雑
3)収納ルールの必要性
4)将来のライフスタイル変化への対応
4. 具体的なファミクロ設計のポイント
1)間取りと動線
2)ハンガーパイプの高さと段数
3)ハンガーパイプの奥行きと配置
4)畳む収納スペースの確保
5)枕棚の有効活用
6)「広さ」だけでは不十分!失敗しないファミクロは「中身」が鍵
5. まとめ:福岡で理想の注文住宅を建てるなら、ファミクロの「中身」にこだわろう
1. そもそもファミクロとは? なぜ今、人気なの?
ファミクロとは、ファミリークローゼットの略称です。その名の通り、家族全員の洋服や持ち物を一箇所にまとめて収納するためのクローゼットを指します。
このファミクロという考え方が広まってきたのは、およそ10年から15年ほど前と言われています。その背景には、共働き世帯の増加があります。皆さんお忙しい中で、家事に費やす時間を少しでも減らしたい、というニーズが高まっているため、家事動線を効率化できるファミクロが注目されています。

2. ファミクロの魅力!メリットとは?
ファミクロを導入することには、多くのメリットがあります。
今回は4つのメリットをご紹介したいと思います。
2-1 家事動線と生活効率の向上
とくに大きなメリットとしては、洗濯後に各部屋に洋服を配る手間と時間が省けることが挙げられます。洗濯には、洗濯機を回して、干して、畳んで、直して、これだけで4つの工程があります。さらに、この「直す」の工程の中には各それぞれの収納に直したり、どこかに一括で置いておくものの、直すのが各個人の裁量に任せるとなると置きっぱなしになってしまったり、、、と多くの手間と無駄が含まれています。ということは、ハンガーに干したままの状態で一括で収納できる、となればもっと作業を減らすことができますよね?この手間をなくすことができる、これがファミクロの最大の魅力といえるのではないでしょうか!
また、自分が着替える場所で子供の着替えもさせられるなど、身支度の効率が上がります。子供にとっても、着替えのために部屋と別の場所を行き来する負担が減るため、大きくなったお子様はとくに、朝の時間を有意義に使えるようになるのではないでしょうか?
2-2 家族の洋服の一括管理
家族全員の洋服をまとめて管理できるため、特に成長の早い子供のサイズアウトした服の整理がしやすいことも、メリットの一つとして挙げられます。衣替えいらずの、視覚的に整理ができることで、自分が持っている服を把握しやすくなり、似たような服を重複して買ってしまうといった無駄を防ぐことにも繋がります。
2-3 各部屋の収納スペースを削減
ファミクロに衣服や小物を集約収納することで、各個室のクローゼットを小さくしたり無くしたりすることが可能になります。これにより、家全体の床面積を抑えられたり、間取りの自由度が増したりする可能性があります。個別に分散させるよりも、まとめて収納する方がスペース効率が良いとされています。
2-4 家族間のコミュニケーションの場に
ファミクロを介して「あれ取って」「これ直しといて」といった自然な会話が生まれ、家族間のコミュニケーションのきっかけになることもあるのではないでしょうか?同性の親子であれば、なおさら一緒に洋服を選んだり、貸し借りを楽しんだり、といった使い方もできるかもしれません。
3. 知っておきたい!ファミクロのデメリット
一方で、ファミクロにはデメリットも存在します。これらの点を考慮して計画することが重要です。
3-1 プライバシーの問題
思春期のお子様や大人の中には、下着など見られたくないものもあるかもしれません。必要に応じて、個人別の収納スペースを一部設けるなどの配慮が必要になる場合もあります。
3-2 時間帯による混雑
特に朝の身支度をする時間帯など、家族が同時に使う場合に混雑する可能性があります。ウォークスルー型を検討すると、通路幅ができるためお互いに自分のスペースでの衣服選定がしやすくなるかもしれません。
3-3 収納ルールの必要性
家族みんなの洋服が集まるため、誰のものがどこにあるかを分かりやすくするための共通ルールを決める必要があります。ルールがないと、どこに何があるか分からなくなり、混乱を招く可能性があります。とくに、衣装ケースは同じものをセットで使用することが多いため、ラベリングすることをおすすめいたします。
3-4 将来のライフスタイル変化への対応
注文住宅は今の暮らしを想定して設計することが多いため、数年後、家族構成や子供の成長などでライフスタイルが変化した場合に、使い勝手が変わってしまう可能性があります。初めのころは、丈が短く二段で使えていたものが、対応できなくなってしまったり、むしろ逆の可能性も起こりえるのではないでしょうか?
4. 福岡での注文住宅に活かす!具体的なファミクロ設計のポイント
以上のメリットデメリットを踏まえたうえで、実際にファミクロを間取りに組み込む際の、ポイントをお伝えさせていただきます。
4-1 間取りと動線
ランドリールームや主寝室から直接アクセスできる間取りは、洗濯物をしまう動線や朝の身支度の動線がスムーズになり、使いやすい一例です。ただし、家族構成によっては、誰のスペースか不明確になりがちなので工夫が必要です。そのため、部屋を壁、下がり壁等で区切ることで、大人用と子供用、夫婦それぞれなどのスペースを明確に分けることができるので、便利です。
ウォークスルーではない突き当たりの空間も、壁面収納として有効活用できます。廊下側や寝室側からもアクセスできるような配置も考えられます。通路壁をそのまま収納に取れるので、容量は格段に倍増します。
4-2 ハンガーパイプの高さと段数
掛ける洋服の種類によっても、必要なハンガーパイプの高さは異なります。例えば、男性用スーツの背広は約76.5cmですが、ハンガーの長さを考慮しますと高さ約90cmの空間が必要になります。
反対に、洋服の丈が短いエリアでは、ハンガーパイプを2段、さらに子供服などであれば3段にすることで、収納力を大幅にアップさせることが可能です。
標準的なハンガーパイプの高さ(例えば床から180cm)にとらわれず、収納する洋服に合わせて高さを調整したり、将来的に変更できるよう可動式のパイプを採用したりすることも検討することで、先ほどあげたデメリットもメリットになりえ、格段に収納量を上げることができるようになります。
4-3 ハンガーパイプの奥行きと配置
奥行きのある空間にハンガーパイプを2列通すことも一つの方法です。ただし、この場合、一つ注意点がございます。重要な注意点として、ハンガーパイプの奥行き(壁からの距離、パイプ間の距離)の設定を間違えると、ハンガー同士が重なり、使い勝手が非常に悪くなる「失敗」が発生します。 一般的なハンガーの幅(約42cm~)を考慮すると、奥のパイプは壁から最低でも25cm程度、手前のパイプは奥のパイプから50cm程度(壁から75cm程度) 離すことが、ハンガーが重ならずに収納するための目安となります。この寸法を意識することが重要です。
さらに、一つポイントをお伝えすると、奥のパイプと手前のパイプの高さを変えることをおすすめいたします。奥にかかっている洋服も手前から見えやすくなり、選びやすくなります。例えば、奥を高く、手前を低く設定する方法があります。
4-4 畳む収納スペースの確保
全ての洋服をハンガーにかけるわけではありません。セーターやTシャツなど、畳んで収納したい洋服のことも忘れずに、棚や引き出しなどを設置するスペースも計画しましょう。クリアケースなどを並べることで、収納効率を高めることもできます。
4-5 枕棚の有効活用
ハンガーパイプの上にある枕棚も重要な収納スペースです。一般的な奥行き45cmの枕棚に加え、奥行き60cmの規格も存在します。奥行き60cmの枕棚には、イケアのスクッブのような収納ケースがぴったり収まり、オフシーズンの布団や、使用頻度の低いものを効率的に収納するのに非常に役立ちます。
5. まとめ:福岡で理想の注文住宅を建てるなら、ファミクロの「中身」にこだわろう
「ファミクロは3畳必要」「4畳あれば十分かな」というように、広さ(帖数)だけでファミクロを考えていませんか?実は、ファミクロの使い勝手や収納力は、帖数だけでなく「中身」、つまり内部の作り方によって大きく変わってきます。
どのように洋服を収納したいか(ハンガーにかけるのか、畳むのか)、家族それぞれの洋服の量や種類、将来の可能性などを考慮して、内部の設計を細かく検討することが、失敗しないファミクロを作るための重要なポイントです。ファミリークローゼットは、福岡での忙しい子育て世帯や共働き世帯にとって、家事の効率化と収納力アップを同時に実現できる非常に魅力的な空間です。しかし、その効果を最大限に引き出し、後悔しないためには、単に広さを決めるだけでなく、内部のハンガーパイプの高さ、段数、奥行き、配置、畳む収納スペースの確保など、細部にわたってご家族の暮らしに合わせた計画を立てることが何よりも重要です。
「広さ」だけでは不十分!失敗しないファミクロは「中身」が鍵
収納のゆとりは心のゆとりにつながります。ぜひ今回の情報を参考に、あなたの福岡での注文住宅計画において、ご家族みんなが使いやすく、本当に「片付く」ファミクロを実現してください。
ウィズダム建築設計をはじめ、地元の信頼できる工務店やハウスメーカーに相談し、専門家のアドバイスを受けながら、理想のファミクロを形にしていきましょう。