家づくりをご検討中の皆様、注文住宅にするか、それとも建売住宅にするか、悩んでいませんか?
それぞれにメリット・デメリットがあり、どちらを選ぶべきか迷う方も多いでしょう。とくに、予算や入居時期、そして何よりも立地を最優先したいという方には、建売住宅が非常に魅力的に映る場合もあるかもしれません。
一方で、「建売は安くても質が悪いのでは?」といったイメージをお持ちの方もいらっしゃるかもしれません。しかし、建売住宅にも優れた物件は存在します。大切なのは、ご自身の求める条件を明確にし、正しい方法で物件を見極めることです。
今回は、日頃から注文住宅を手がけるプロの視点から、建売住宅を検討する際に失敗しないための賢い選び方、特に性能や品質を重視したい方がチェックすべきポイントを詳しく解説します。
福岡で理想の住まいを見つける参考にしていただければと思います。
- 目次
- 1. そもそも、どんな人が建売住宅に向いている?
2. 建売住宅選びで最も重要な「誰に相談するか」
3. 建売住宅のプロが見る!必ずチェックすべき「マスト条件」
1)断熱性能のチェック
2)気密性能のチェック
3)耐震性能のチェック
4. 知っておきたい!チェックしておくと「なお良い」ベター条件
1)外壁材の種類
2)屋根材の種類
3)バルコニーの有無と形状
4)換気システムの種類
5. 間取りやデザインを重視するなら施工会社をチェック
6. 結論:建売住宅の購入は注文住宅会社に相談するのがベスト
1. そもそも、どんな人が建売住宅に向いている?
建売住宅は、主に以下のようなニーズを持つ方と相性が良いとされています。
ニーズ
・ 立地を最優先したい
学区や駅からの距離など、建物の性能よりも場所の利便性を重視する場合。
・ 家づくりにかけられる時間がない
注文住宅のように何度も設計の打ち合わせをする時間が取れない場合。
・ すぐに入居したい
転勤や子どもの入園・入学など、特定の時期までに引っ越しが必要な場合。
・ 予算が限られている
年収や今後の想定される支出から、住宅にかけられる費用に上限がある場合。
これらの条件に当てはまる方にとって、建売住宅は非常に適した選択肢となり得ます。
しかし、「建売住宅とは言え、メンテナンスの手間がかからない家が良い」「使いやすい間取りが良い」「温かい・涼しいといった性能や、地震に強い家を諦めたくない」と考える方もいらっしゃるでしょう。
このような性能やデザインを重視したい方は、建売住宅を検討する際に特に注意が必要です。
2. 建売住宅選びで最も重要な「誰に相談するか」
実は、建売住宅を購入する上で、物件そのものよりもまず「誰に相談するか」が非常に重要です。
多くの方が地元の不動産屋さんに相談に行くイメージがあると思いますが、それは現代の賢い買い方ではないかもしれません。
なぜなら、不動産仲介だけを行っている不動産屋さんは、建物の性能や品質について詳しくない場合が多いからです。彼らは立地や価格といった情報提供が中心になりがちです。
では、誰に相談すべきか?
プロがお勧めするのは、注文住宅を手がけている会社の不動産部門です。
注文住宅の会社にいる彼らは、日頃から建築部門のプロと連携し、建物の性能や品質について深く学んでいます。良い建売とそうでない建売を見分ける知識を持っているため、あなたの代わりに物件の良し悪しを判断する手助けをしてくれるのです。建売購入で失敗したくないなら、まず住宅会社に相談してみましょう。
3. 建売住宅のプロが見る!必ずチェックすべき「マスト条件」
続いて、建売住宅の性能や品質を重視する方が、後から簡単には変更できない重要な部分として、最低限チェックすべき「マスト条件」があります。これは人間の体に例えるなら「内臓」にあたる部分です。
3-1 断熱性能のチェック
快適な暮らしや光熱費に大きく影響するのが断熱性能です。
最低限、ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)基準程度の断熱性能をクリアしているか確認しましょう。
確認方法は主に2つあります。
① 長期優良住宅の認定の取得有無
口頭だけでなく、申請書を見せてもらいましょう。
申請書の中に断熱等性能等級の計算結果が記載されています(UA値など)。
② BELS(建築物省エネルギー性能表示制度)の評価書の取得有無
評価書があれば、断熱性能(UA値)やZEH表示などが明確に記載されています。
「ZEH相当」という表現だけで判断せず、必ず計算された数値が書面で示されているかを確認しましょう。同じ仕様で建てられていても、建物の形状や窓の配置によってUA値は変わってくるため、個別の計算が必要です。
3-2 気密性能のチェック
どんなに断熱材が良くても、家に隙間があると熱が出入りしやすく、断熱性能が十分に発揮されません。また、隙間が多いと計画通りの換気も行われにくくなります。
法律で2時間に1回家中の空気が入れ替わるように換気計算が義務付けられていますが、これは隙間がない前提の話です。換気が不十分だと、室内の空気環境が悪化するリスクがあります。
建売住宅で気密測定を行っているケースはほとんど見られません。そのため、どのような断熱工法が採用されているかを確認することが、気密性能をある程度判断する目安となります。
・ 吹き付け断熱、セルロースファイバー、外張り断熱
これらの工法は専門業者が隙間なく施工しやすいため、気密性が確保されやすい傾向があります。
・ グラスウールのような充填断熱
柱と筋交いの間の隙間などに充填しにくく、施工者の腕によってムラが出やすいため、気密性が確保されにくい場合があります(ただし、丁寧に施工し、気密処理を行えばグラスウールでも気密は取れます)。
また、耐震用の体力面材(構造用合板など)が家の外周部に貼られているかもチェックポイントです。これは本来耐震補強のための部材ですが、面で覆うことで気密性の向上にも寄与します。
3-3 耐震性能のチェック
地震大国の日本では、家の耐震性能は非常に重要です。
最低限、耐震等級3を取得しているか確認しましょう。耐震等級3は、建築基準法の1.5倍の耐震性を持つ基準であり、近年では建売住宅でもクリアしている物件が増えています。
「耐震等級3相当」という表現ではなく、正式な認定や計算書で確認することが望ましいです。さらに、「許容応力度計算」に基づいた耐震等級3であれば、より精密な構造計算がされているため安心感が増します。
これらの断熱、気密、耐震の3点は、後から大幅な改修が難しい部分です。建売住宅でも性能を重視する方は、必ずこれらの「マスト条件」を確認しましょう。
4. 知っておきたい!チェックしておくと「なお良い」ベター条件
マスト条件に加えて、チェックしておくと入居後のメンテナンス費用や快適性に差が出る「ベター条件」もあります。これらは家の「表面」にあたる部分で、費用はかかりますが後から変更することも可能です。
4-1 外壁材の種類
建売住宅の多くはサイディングが使われています。その中でも、雨で汚れが流れ落ちやすくなる「親水コート」が施されているかどうか、確認しましょう。
さらにチェックしたいのは、日光(紫外線)による劣化を防ぐためのトップコートです。ニチハのプラチナコートやケイミューの光セラといった、色あせしにくい加工がされているサイディングは、美しさを長く保ち、再塗装の頻度を減らすことができます。
また、サイディングのつなぎ目にあるシーリング材(コーキング)も重要です。
一般的なシーリング材の耐用年数は10年程度ですが、高耐久シーリングであれば15年程度に伸びるものもあります。シーリングの劣化は雨漏りの原因になるため、耐久性の高いものが使われていると安心です。
再塗装やシーリングの打ち直しには足場代がかかるため、メンテナンスサイクルが長い建材を選ぶと、将来的なコスト削減に繋がります。
4-2 屋根材の種類
建売住宅でよく使われるスレート(コロニアル)は、比較的メンテナンス頻度が高いとされています。メンテナンスの手間やコストを抑えたい場合は、瓦やガルバリウム鋼板などが使用されているかチェックすると良いでしょう。
4-3 バルコニーの有無と形状
バルコニーは洗濯物を干すスペースとして便利ですが、基本的には、ない方がメンテナンスの手間や雨漏りのリスクを減らせます。とはいえ、建売住宅は敷地を有効活用するため、庭が狭くバルコニーが設置されているケースが多いです。
もしバルコニーがある場合は、以下の点をチェックしましょう。
・ 面積:必要以上に広いバルコニーはメンテナンス費用がかさむため、できるだけ面積が小さい方が良いです。バルコニーの防水層はFRPが一般的で、10年程度で防水のメンテナンスが必要になります。
・ 形状:建物内部に引っ込んだ形になっているインナーバルコニーは、雨漏りのリスクが高まりやすいため、避けた方が良いでしょう。インナーバルコニーの下は居住空間になっていることが多いため、雨漏りした場合に建物の内部に影響が出やすくなってしまいます。理想としては、バルコニーの下に部屋がない(外にせり出している)設計の方が、リスクを回避できます。
4-4 換気システムの種類
建築基準法により、全ての住宅には換気システムの設置が義務付けられています。
換気システムには1種、2種、3種がありますが、住宅で主に使われるのは1種換気と3種換気です。
建売住宅の場合は、1種換気システムがおすすめです。
3種換気の排気は機械で行いますが、給気は自然に行います。気密性の高い家であれば自然給気でも計画通りの換気が行われやすいですが、気密性が曖昧な建売住宅では、十分な給気ができず換気が不十分になるリスクがあります。
1種換気は、給気・排気ともに機械で行います。そのため、気密性に左右されにくく、計画通りの換気が行われやすいというメリットがあります。
さらに、最近の1種換気は熱交換型が主流です。これは、排気する暖かい(または冷たい)空気から熱を取り込み、外から取り込む冷たい(または暖かい)空気に熱を移してから室内に送るシステムです。これにより、冬は暖かく夏は涼しい空気を室内に取り込めるため、エアコン効率が上がり、快適性や省エネ性が向上します。
これらのベター条件も、チェックすることでより質の高い建売住宅を選ぶことができます。
5. 間取りやデザインを重視するなら施工会社をチェック
建売住宅は間取りやデザインが決まっているため、「好みに合うかどうか」が重要です。しかし、見た目だけでなく、「どこの会社が建てた建売か」を確認することも大切です。
建売住宅を専門に建てている会社の場合、設計の考え方が「いかにコストを抑え、無駄のない標準的な間取りにするか」に重点が置かれがちです。そのため、間取りが似通っていたり、最新のトレンドやライフスタイルに合わせた工夫が少なかったりする傾向があります。
一方、注文住宅をメインに手がけている会社が分譲(建売)住宅を販売している場合があります。
このような会社の設計士は、日頃からお客様と密な打ち合わせを行い、「どうすればもっと使いやすい間取りになるか」「快適な空間になるか」を常に考えて設計しています。そのため、細部にまで配慮が行き届いた、高品質な間取りやデザインの建売住宅になっていることが多いのです。
間取りやデザイン、そしてディテールまでこだわりたい場合は、注文住宅会社が建てた建売住宅かを確認してみることをお勧めします。
6. 結論:建売住宅の購入は注文住宅会社に相談するのがベスト
ここまで見てきたように、建売住宅の中にも性能や品質に優れた物件は存在しますが、それを見抜くには専門的な知識が必要です。特に、建売住宅でも性能やメンテナンス性を妥協したくないと考えるなら、ご自身だけで判断するのは非常に難しいでしょう。
だからこそ、建売住宅の購入で失敗しないための最も賢い方法は、注文住宅会社に相談することです。注文住宅のプロである彼らは、建売住宅のメリット・デメリットを理解した上で、今回ご紹介したような専門的な視点から物件をチェックし、あなたの家探しに伴走してくれます。
福岡で理想の住まいを探すにあたって、もし建売住宅も選択肢に入れているのであれば、まずは私たちのような注文住宅会社に相談してみませんか?あなたのニーズを丁寧にヒアリングし、予算やご希望に合った、品質の高い建売住宅探しをサポートしてくれるでしょう。
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